me-fullnessアプリの体験価値、その先にある「新たな可能性」とは?

「心と体を満たすことを、日常の当たり前に」をコンセプトに、心と体を満たす体験を創造するme-fullness(ミーフルネス)プロジェクト。me-fullnessの技術を活用し、リハビリテーション患者や被災者の方々のWell-being(ウェルビーイング)を追求すべく、東北大学とのコラボレーションを開始しています。

 インタビュー前半の記事に引き続き、東北大学 指定国立大 災害科学 世界トップレベル研究拠点で研究活動をされている奥山純子さん、門廻充侍さんへのインタビュー内容をご紹介します。

 今回は、me-fullnessアプリをご使用いただいた感想や、そこから感じた可能性、me-fullnessプロジェクトの今後に対する期待などをお伺いしました。(インタビューの聞き手は、POLA R&M me-fullnessプロジェクト Founder 本川智紀)

<お話を伺った方>

東北大学病院 肢体不自由リハビリテーション科
奥山 純子先生

東北大学 災害科学国際研究所
災害評価・低減研究部門 津波工学研究分野
門廻 充侍先生

me-fullnessアプリで一人ひとりのWell-beingに貢献できる

本川 me-fullnessアプリを実際に使用していただいて良いと感じた点、期待されている点などをお聞かせください。

門廻さん 私が研究している生存科学の観点から、me-fullnessアプリについて2つの可能性を感じています。一つは、「災害から生き残った人」に対するアプローチ。もう一つは、「災害から人の命を守る」ためのアプローチです。

 まず、前者の「災害から生き残った人」に関しては、心をケアできる新たな仕組みが必要だと感じています。例えば、専門家による高度な医療介入までは必要ないけれども、何らかの方法で心をケアする必要のある方々。そうした方々に、me-fullnessのようなアプリケーションを届けるイメージです。

 また、災害後の心的負担や、日本のバックグラウンドを考慮しても、「自然災害から生き残ること」のみならず「災害から生き残った人へのケア」が、ますます重要になってきます。医療介入が必要な人に対しては専門家のケアを、セルフケアで対応できる人の心のケアはme-fullnessのような技術を――。というように、限られたリソースを最適配分することが大切になってくると思います。

本川 災害に遭遇した方に、その後の人生をよりよく生きていただく。そのためのサポートにme-fullnessアプリを活用する、ということですね。後者の「災害から人の命を守る」は、どのようなお考えでしょうか。

門廻さん 次に来る災害から命を守ろうとするとき、私は「心・技・体」の三要素が必要だと考えています。心と技と体、この3つがうまく機能して初めて、命を守るためのパフォーマンスが最大限に発揮される、という解釈です。

 その視点で捉えると、現状の防災は「どうやって守るか」「逃げるか」という「技」部分に重点が置かれているように感じます。仕事でもそうだと思いますが、心身がwell-beingだからこそ、冷静な判断や素早い行動がとれそうですよね。

 そう考えると、防災に対してもさまざまな分野の人を巻き込んで、アプリケーションや解決策を提案していくことが大事だと思います。加えて、さまざまな分野の方が協力してこそ、一人ひとりのWell-beingに貢献できるはずです。

 一方で、我々にとってアプリケーションの開発は大きなハードルでした。そうした中、Well-beingのソリューションの一つとしてme-fullnessを提案するPOLAさんと出会ったわけです。実際にアプリを使用させていただき、これから産学連携で新しい価値を生み出せるのではないかと期待を高めています。

奥山さん 身体の状態のモニタリングアプリは、既にたくさんあるんですよね。脈拍を測定したり、睡眠時間を記録したり…。でも、記録を取ることが好きな人でないと、なかなか続かないんですよ。

 me-fullnessアプリの面白い点は、まず「顔を映す」ところです。顔を見ることは大事なことだし、これならば日々続けられるのかな、と思います。そして、提供されるコンテンツが音楽療法をベースにしている点にも興味を持っています。理論に基づいて開発されたものであることからも、真面目に研究を積み上げてきたアプリだと感じます。

me-fullnessを活用して「誰一人取り残さない」社会へ

本川 me-fullnessの今後の可能性については、どうお考えでしょうか?

門廻さん 現状のme-fullnessアプリは、「視覚」と「触覚」をメインにしていますが、今後は「香り」も加わると伺っています。そのようなソリューションは、視覚や聴覚では届けられなかった層へのリラクゼーションにも活用できそうだと感じています。

 価値観や生き方に多様性がある現代で、必ずしも視覚と聴覚のコンテンツが生活者に響くとも限りません。多様な方が利用できるように配慮した仕組みづくりをすることは、SDGsが根幹に掲げている「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」にも繋がると思っています。

 もちろん、現状のアプリのメインユーザーの方々に、どのようなコンテンツを創り提供するか、という点も楽しみにしています。それに加えて、「メインユーザーとして考えていなかった層に、どうアプローチするか」にも期待したいですね。

奥山さん 大学病院の中にはいろいろな科があります。一例として「緩和ケア科」のことを考えると、家族が「何かしてあげたい」と思ったときに、お気に入りの香りやフワフワの毛布を届けてあげる。患者さんの不安などの精神的なつらさを和らげるための手段が増えれば、患者さんやご家族の方の気持ちを少しでも楽にできるのではないか、と思います。

 また、ICU(集中治療室)でも、香りや触覚であれば、医療器具の働きを妨げることなく、患者さんに少しでもリラックスしてもらえるはずです。

 MRIや採血、食事制限など、病院は患者さんにとってストレスが多い場所です。そういった中でも、少しでもWell-beingな状態でいられたほうが、身体の状態もより早く良くなるのではないでしょうか。入院生活を少しでも気持ちよく送ってもらえた方が、医療を提供する側にも、医療を受ける側にも良い影響を及ぼすと考えています。

本川 私たちは元々、日々仕事をしていたり、自宅で日常生活を送ったりする方々をターゲットに考えていました。でも、子どもや高齢者、入院中の患者さんに対しても、我々の技術を活用していただける可能性があるのですね。

 一人ひとりの方がWell-beingな状態を目指すサポートをする、という根幹は一緒ですから、ニーズに合わせてme-fullnessアプリの改善・刷新を続けていくつもりです。

優しい国だからこそ生まれたme-fullnessアプリ

本川 me-fullnessが社会課題・地域課題にアプローチできる可能性について、何か感じられている部分はありますか?

奥山さん 私たちは東北大学の地元、宮城県や東北地方と連携して、活動のフィールドを広げています。直近も、宮城県七ヶ浜町と一緒に、健康寿命を延ばすための取り組みを進めており、そこでもme-fullnessが役に立つのではないか、と考えています。

 老若男女さまざまな方が暮らしており、普段はあまりデジタル機器に触らない方もいらっしゃいます。そういった町で幅広い層にme-fullnessアプリをつかっていただいて、どんな感想が出るのか、どういった興味を示していただけるのか、楽しみにしています。

 東日本大震災が起こった後、復興を進める中で防波堤をつくり、避難場所の看板を立て、そうした取り組みも10年経つという一つの区切りを迎えています。そんなタイミングだからこそ、「災害から生き残った人」がハッピーに暮らすことが一層重要視されています。

 もちろん町の整備や安全性の確保は必要です。でも、整備が一区切りしたからこそ、新しくできた町で「幸せに暮らす」も復興の一環ではないでしょうか。そこで、me-fullnessを活用することで、少しずつお手伝いさせていただきたいですね。

門廻さん 10年という区切りは、あくまでも"区切り"であり、様々な理由を考慮して決められたものだと思います。私自身の例で考えると、小児がんの経験を素直に認められたのも、16年後でした。この点から考えても、10年後のサポートを必要とする人はいると思います。そこを「どうやって持続的にサポートするか」という問いが、大切だと思っています。様々なテクノロジーが発達している現代だからこそ、me-fullnessのようなアプリを届け、一人ひとりに寄り添っていくことが大事だと感じています。

 自然災害の多い日本では、災害経験後のWell-beingには大きなニーズがあるはずです。今後、防災におけるWell-beingに目を向けたときに、これから始める私たちの取り組みを「こういう事例がありますよ」というように提案できる状態を目指したいですね。

奥山さん 日本は優しい国でもあり、一人ひとりを大切にしようとする国です。だからこそ、me-fullnessのような優しいアプリを一人でも多くの方に届けることで、一人ひとりの幸せやWell-beingにつなげられればと思います。


 >> インタビュー前編「リハビリテーション患者や被災者にとってのWell-beingとは何か?」はこちら




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